広島の転出超過について本気で考えてみた
先日、2022年の住民基本台帳人口移動報告が発表された。 それによると、広島県は転出超過となっている。しかも、9207人という全国最多の転出超過となっている。 なぜこんなことになってしまったのか。 今回は広島の転出超過について本気で考えてみようと思う。
目次
広島の転出超過とは
転出超過とは、転出者が転入者を上回ることだ。 2022年、全国各地から広島県に転入した人の数は、45,717人となっている。 その一方、広島県から、他の都道府県に転出した人は、54,924人となっている。 転出が転入を9,207人上回る結果となった。
広島の転入者と転出者の推移
では、転入者と転出者の数がどのように推移しているかをみていこう。 図1は、2021年1月から2022年12月までの広島の転入者と転出者の推移だ。 これを見ると、すべての月で転出者が転入者を上回る転出超過となっている。 特に3月の転出超過が多くなっている。

東京の転入者と転出者の推移
参考として2022年転入超過が最も多かった東京の転入者と転出者の推移をみていこう。 東京の場合、転入超過の月も転出超過の月もあるが、3月の転入超過が、圧倒的となっている。

福岡の転入者と転出者の推移
参考として2022年転入超過だった福岡の転入者と転出者の推移も確認しておこう。 福岡の場合、2022年5月を除くすべての月で転入超過となっている。

年齢別にみるとどうなのか
転入や転出をしている人たちは何歳くらいの人が多いのか、住民基本台帳人口移動報告の5歳毎の年齢階級データにて確認していこう。 5歳毎年齢別に見ると、全国的に20歳から34歳までの若者の移動が多いことがわかる。 これは、進学や就職などで移動をする人が多いことが理由と考えられる。 広島県の場合は、全体的に転入が転出を下回っているが、特にその差が大きいのが、20歳から34歳までの層である。(図4)

広島市だけで見るとどうなのか
次に広島市のデータをみてみる。 広島市だけでみると、20歳から34歳までの層の転出超過が少し抑えられているが、広島市と広島県、ともに転出超過であることが分かる。(図5)

福岡市の場合
参考までに福岡市のデータもみてみる。 福岡市は転入超過の年齢層と転出超過の年齢層があるが、15歳から24歳までの圧倒的な転入超過により、全体としても転入超過となっている。

転入者はどこからきて、転出者はどこへ行くのか
広島の転出者はどこに行ったのか
広島の転出者は一体どこに行ってしまったのか、住民基本台帳人口移動報告のデータをもとに整理した。 広島県を転出した人は、全国各地のさまざまなところに転入しているが、特に多いのが、東京都や大阪府だった。 また、岡山県や山口県といった、お隣の県への移動も多く見られた。

広島県へ転入した人はどこから来たのか
一方、広島県に転入した人はどこから来たのか、2022年の広島県転入者の転入前の住所地を整理した。 広島県に転入する人は、さまざまな都道府県から転入してきているが、特に多かったのが、お隣の岡山県と山口県だった。 また、東京都や大阪府といった人口が多い地域からの転入も多かった。

広島県の転出者を引き付けている地域とは?
それでは、広島県転出者を引き付けている地域とはどこなのか、広島に転出した人より広島から転入してきた人が多い都道府県をデータをもとに算出してみた。 その結果、46都道府県中、36都道府県が広島に転出した人より広島から転入してきた人のほうが多いという結果になった。 特に多かったのが、東京都と大阪府である。 図9は、広島から見たときに、該当地域への移動が転出超過となっている上位10都道府県の転出超過人数をグラフにしたものである。 2022年東京都から広島県に転入した人は4,186人いたが、それを上回る6,862人が広島県から東京都に転出した。

広島はどの地域から人を引き付けている?
反対に、広島から転入してきた人より広島に転出した人が多い都道府県をデータをもとに算出してみた。 中国地方では島根県や鳥取県、四国地方では愛媛県や高知県、香川県となっている。

まとめと考察
広島県は、20歳から34歳までの層が大きく転出超過となっており、進学や就職での、東京都や大阪府といった都会への移動が大きな要因となっていると考えられる。 また、広島県への転入より広島県からの転出のほうが多い地域は、46都道府県中36都道府県となっており、広島県から、他都道府県へ人口が流出していると思われる。 中国地方や四国地方の一部地域からの転入超過はあるものの、岡山県や山口県といったお隣の県への転出超過もあることから、もはや中四国最大の都市があるということだけでは、人を集めることができなくなっていると考えられる。 日本全体で人口が減少している以上、今まで通りの中四国最大の都市を維持しているだけでは、転出超過は止められない。 転出にはさまざまな理由があるが、まずは広島に住み続けたい人が、住み続けられる環境を充実させていくことが大切であると考えられる。 東は大阪、西は福岡という大都会に挟まれ、中四国の魅力ある県に囲まれる中、広島はどんな地方都市を目指すのか、もっと発信していく必要があるのかもしれない。 広島県は、実は、認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが行った2022年の移住希望地ランキングでは、セミナー参加者部門にて第1位に選ばれている。 多くの人が広島に移住したいと思っていることがうかがえる。 広島県は、山も海も近く、瀬戸内海に浮かぶ島々もあり、おいしい水と食べ物、新鮮な魚介類が日常にあり、住みたい場所としての魅力は十分にある。 一度は進学や就職等で県外へ出ても、いつかは広島に帰ってきたいと願う人もいる。 移住希望者は多くいるが、そういった人たちを受け入れる環境が不足していると考えられる。 住みたいと思った人たちが実際に広島で暮らしていける環境をこれまで以上に整えていく必要があるのかもしれない。